【アメリカ】 養子の受け入れについて

私が学生時代に留学していたサンフランシスコではゲイのカップルの割合が非常に多く、世界でも屈指のゲイタウンでした。同性愛者ですからもちろん子供が産まれることはなく、どうしても子供が欲しいという人は養子を迎え入れるしかありません。もう10年も前の話しなので、日本を含め、養子に関する仕組みはだいぶ変わったのかもしれませんが、当時、ホームステイをしていた家庭でも養子を迎え入れていて、その時の過程を見ていると「やっぱりアメリカはオープンな国だなぁ」と感心したのを覚えています。


ホストファミリーは男性の同性愛者で、ものすごく気遣いのできる素晴らしい人達でした。日本ではまだまだ偏見の目が強く、ゲイと言うだけで引く人もいるでしょう。私もその時まではそうでした。しかし、彼らがお互いを愛し合う姿勢は男性や女性と行った垣根を越えたもっと深いものでした。そんな二人が子供を迎え入れることを決めて、その準備が始まりました。


一般的には既に生まれている子供を受け入れるパターンと、代理母などを通して子供を産んでもらうパターンが主流だと思いますが、彼らは後者を選びました。アメリカでも代理母の依頼は多く、まずはウェイティングリストに登録しなければなりません。最終的に彼らの代理母として名乗り出てくれたのはメキシコ系の20代の女性で、私も何度か会い、家に泊まりに来たこともあります。それからしばらくして妊娠、出産をし、かわいい女の子が産まれました。


その時、私の脳裏に浮かんだのは「この子が成長して、自分は同性愛者の娘であり、養子として迎え入れられた」と意識するようになったとき辛い現実が待ってるかもしれないということです。サンフランシスコはゲイに対して寛容とはいっても子供の世界は残酷ですからイジメに遭わないとも言い切れません。


しかし、彼らはそういうこともすべて理解して、受け入れ、決断していたようです。数年後、彼らの家を訪れた時、女の子は大きくなっていて、しっかりと話しをするようになっていました。そして、夕食の時間、私と彼らの会話に彼女が割り込んでくると、彼らの一人が「今、僕は別の人と話しをしているんだよ。もし、話しがしたいならちゃんとExcuse meと言わないと駄目だ!」と叱っていました。そうすると彼女は「Excuse me...」と言い、それを聞いた彼らは微笑みながらしっかりと褒めていました。まだ、小さい子がここまでしっかり親とコミュニケーションを取り、素直に謝る気持ちを持っているなんて、普通の親でもなかなかできることではありません。かれらの愛情の深さは実の親以上なのかもしれません。女の子は今年で10歳になり、彼らは2人目の女の子をadoptしました。


周りも協力的で理解のある人が多いようで、本当に良い家庭を築いている印象を受けました。残念なことにそういう環境があるところは世界的にも稀です。もっと世界中の人がそういう人達を理解してこんな話しが珍しくない環境が作れればいいんですけどね。